フィギュアスケート人気、あのころがピークだったね、なんて昔話したくない
高田馬場にスケートリンクを残したいということで、引き続き署名運動やってます。
ツイッターなどで、いろんな方がフィギュアスケートについて語っていらっしゃるのを読んでいると、本当に勉強になります。
2017年11月付のこんな記事を見かけて、常に問題意識を持っている人はいるんだけど、スケート界はあまり変わってないよなあと実感したり……。
個人的な話になりますが、私、自分でスケートを始める前は、サッカーに夢中でした。
テレビでは、国内外の試合結果や活躍する選手について紹介する番組はたいていチェックしていました。でも一番好きだったのは、ちょっと毛色は違うけれど、テレビ東京で放送している「FOOT BRAIN」という番組でした。
この番組がほかのサッカー番組と違うのは、専門家を招いて技の練習法や体を鍛えるためのトレーニング、食事などに科学的にアプローチしたり、海外のビッグチームのスタジアムの構造や、トレーニングはもちろん、経営の特徴、地域社会とのかかわりなんていうところにまで切り込んだりしていた点でした。
サッカーは、日本でも野球に迫るほどの人気が出ていますが、各クラブチームの経営は決して楽ではありませんし、それを克服し、同時にすそ野を広げて優秀な選手を育て、さらにリーグで勝ち抜いて優勝を手にするために、J1はもちろん、J2、J3のチームも、どこも決して楽ではなく、知恵を駆使して取り組んでいます。
例えば欧米では多くの場合、選手たちはクラブチームの下部組織などから出てきますが、日本ではクラブチームのほかに、学校の部活から育ってくるこどもたちもいますし、それぞれ文化の違う選手たちが、プロになって活躍していくことで得られる化学変化について語られることなんかもあったように記憶しています。
自分でスケートをするようになってからは、サッカーに関する情報収集はやっていないのでもう最新状況はわからないのですが、なににせよはっきりしているのは、そこは大きなお金が動くところで、お金を動かすことを込み(つまりビジネスとして)、サッカーを愛する人たちと、サッカーは素人だけどお手伝いできるよ!っていう人たちが手を携えて、サッカーというスポーツを、未就学の子供たち向けの教室から、プロスポーツ、生涯スポーツまで含めて全世代で盛り上げることでビジネスとして成立させるために取り組んでいる人たちがいるってことです。
それはサッカーを愛しているから、サステイナブルにずっとサッカーをいろんな形で楽しんでいたいから。
で、そこんとこ、フィギュアスケートはどうなんでしょう。
上に挙げた記事では、選手を目指す子供たち、あるいはトップを目指す選手たちにとって、どんどん金がかかるスポーツになってしまっていて、どうなんのよ、というようなことが書いてあると思うんですが(読解力、大丈夫かな)。
私、正直、大人スケーターとしては、まあ日本がこれまでたどってきた経済の道筋は見ていますから、かつてはもっとあったスケートリンクがある時期にどっと減ったことは知っているわけです。だから、もちろん第一義的には自分が好きだからスケートに打ち込んでるのですが、内心のどこかで、リンクが儲かってくれればつぶれることもないから、それが現役の選手たちを支えることにもなる、と思ってお金を使ってきたところがあるんです。きっとそんな大人スケーターは少なくないはず。
リンクが減った理由は、「儲からなくなった」「面倒になった」「もっと儲かる商売に鞍替えしたくなった」「設備が古くなったけど、新しいもの入れるほどやりたくないし辞める(あるいは入れる財力ない)」といったようなところでしょうか。
泣く泣く辞めざるをえなかったというスケートリンクもあるでしょうし、ビジネスだものってバサッと辞めてしまうところもあったに違いない。それでも、例えば本当にたくさんリンクがあったかつての大都会東京では、リンクを失った利用者たちも、少し遠くなってもそれほど遠すぎないところにある別のリンクに移籍すればよい(もちろん、それを喜んだ人なんていないでしょうが)という感じだったでしょう。
でも、いまは事情が全く違うんですよね。
リンクの減少傾向は続いています。スケート人気がほとんど絶頂とも言っていいほどのところに達しているのにもかかわらず。
荒川静香さんがバンクーバーで金メダルをとったとき、シチズンプラザのスケートリンクは貸し靴がなくなるほどお客さんが入ったそうです。その後、浅田真央さんや高橋大輔選手はじめ、たくさんの日本のトップスケーターが世界で活躍し、スケート人気はぐんぐん高まっていき、羽生結弦選手らの登場で、その人気は絶頂を迎えています。
フィギュアスケートの世界に足を踏み入れる子供たちが増え、たくさんの大人たちも自らスケート靴を履き、競技人口はぐっと数を増しています。
それだけじゃありません。さまざまな国際大会や全日本選手権、全日本ジュニアなどはもちろん、地方大会にもたくさんのファンが足を運ぶ時代です。アイスショーなどは高額でもチケットを取ることすら困難なほど盛況だったりします。
たくさんの人たちが、フィギュアスケートのためにものすごい額のお金を放出しているんです。
なのになぜ、フィギュアスケート界は貧しいままなのでしょうか。
いま、スケートがやりたい人は増えているのに、それを受け入れきれない環境があります。
でも、スケートに興味を持っている人、スケートをやりたいと思っている人たちはいつまでもいるわけではありません。
ただでさえ練習環境が恵まれていない日本。対して、他のアジア諸国はもちろん、各国は練習環境の充実に力を入れています。
このままでは、日本のフィギュアスケートが世界から忘れられる日がきたって不思議ではありません。
フィギュアスケート、流行ってたねえ昔、なんて、そんな会話をする時代なんて来てほしくないのですけれども。